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士官学校、アカデミーで教えられたことは、実際戦場に立つための切符の買い方を教えられたようなものだった。
電車に乗るために必要となる切符。それを買う手段を学ぶだけ。
それはまだ乗り方すらわからない、戦場への立ち方を知らないとゆうこと。





「で、その書類をどこに置いたか忘れた、ってことですよね?」


ふぅ…、とため息を付きながら呆れた声を出すのは、ヴェステンフルス隊MSパイロット、カノン・キャメルだった。
彼は金髪の下から覗かせるブルーパープルの瞳で、デスクを探す己の隊長を見る。
端正な顔立ちの青年は、女性の様な綺麗な顔立ちをしている。
独特の色彩を放つ瞳に映るのは、オレンジの髪が特徴的な青年、ハイネ・ヴェステンフルス―――この隊を指揮する隊長。
まだ若い身ながら国防省直属、特務隊フェイス一員とするザフトでもエリートだ。
フェイスに身を置きながらもこうして独自の隊を持つことは珍しく、それも一貫してハイネの軍人としての優秀さと議会からの人柄の信頼をうかがわせる。
いかなる指揮系統にも真に身をおくことはなく、時にその権限は役職に関わりなく発揮できる―――それがフェイスだ。
その得意の存在が己の隊をもつとなれば、その隊すら特別権限のある隊になることとなる。
いわゆる異質の存在だ。ザフトの中でヴェステンフルス隊と言えば、軍の命令によって動きながらも独自の行動を有する存在。
アカデミーで教科書に載り、教官から教えられたフェイスの存在はザフトの軍人からすればエリートの象徴他ならない。
その敬遠の存在であるはずの人物は、今カノンの目の前に疑いたくなるほど頼りない隊長に見えた。

だからカノンはため息をつくのだ。何も書類をどこに置いておいたのか忘れてしまった、ということについてではない。
このことにため息をつくのはカノンではなく、ラルクになるだろう。だから違うのだ。まったく違う、と言い切ってしまうには、少し気が引けてしまうが。


「ここに置いといたはずなんだよな」
「…ないですね」


いくら置いといたと言ってもないものはない。残念ながらその形跡さえない。
まったく…と、カノンは思う。
ハイネのデスクは特別ちらかっているわけではない。
もちろんこの隊長室とて、ものが散乱してちらかっているわけではない。
むしろどちらかというと綺麗に整理され、片付いた部屋、という印象をもたらせるだろう。
なのにどうしていつもいつも書類をなくしてしまうのか。これは今に始まったことではない。
毎回隊員たち―――主にラルクが困って注意しているのだが、いっこうにおさまらない。
性格上カノンは一緒に探すことにしてしまうし、ラルクも役割上するはめとなる。
フェイフォンは置いたのはハイネなので隊長にしかわからないだろう、という正論で割りきってしまうし、スピアは最初は探すもののすぐ違うことに移行してしまうし、クリスにいたっては部屋を散らかしに来たとしか思えない。
ゆえに結局いつもカノンとラルクで探すことになってしまうので、ラルク自身のストレスは毎回上がり…最近では何かと癒しを求めるようになってしまっている。
カノンとしては別にフリーの時間であれば探すことぐらい構わないので、ストレスにはそんなにならないのだが。あくまでも時間のあるときのみ付き合っているからだろうけれど。


「またラルクに怒られますよ?」
「わかってんだけど、俺も他の仕事とかでいろいろと忙しいわけよ」
「だから、後でしようと置いてしまい、それを忘れてしまう、と」
「そうそう」


はぁ、と本日何度目かのため息をつく。
忙しいのはわかる。
実際ヴェステンフルス隊は実に多くの任務が与えられ、それもどれも一筋縄ではいかないものばかりなのだ。
赤服のみで構成される小規模隊であるヴェステンフルス隊は独自の旗艦を持たない。
それは常にどこの艦に入り込むこともあり、また個々の能力の高い隊ゆえに隊員たち各自に任務が割り振られるからだ。
そのため任務は一度に多数与えられることは必須。隊長であるハイネは常にその管理を行わなくてはいけない。
もっとも管理という意味ではラルクが行っているので、その報告を受け、本部と繋ぐという意味ではある。―――だから、ラルクが書類にはうるさいのだ。


「どこ置いたっけなぁ…」


戸棚や引き出しを見ながら、今度書類ボックスでも置いた方がいいかもしれないな、とカノンは思う。
とりあえず置いておくのではなく、そこに全部いれてもらえばこういうことはなくなるのでは…。
いや、それができないから置いてしまうのか。
自分も一緒に探すなど甘いことをしてしまうからいけないのだろうか。

ファイルを捲る隊長をちらりと見る。
時々、どうしてこんな人が隊長になれたのか不思議に思うことがある。
確かにパイロットとしては一流であるし、任務成功率も高い。頭もいい。
けれど、どこかいまいち抜けているのだ。
かの仮面をつけたザフトの智将はこんなことはなかっただろう。もっとも彼の指揮下に入ったことないのでわからないが。
他のどの隊の隊長も艦長も、自分たちの隊長よりもよっぽど隊長らしいと思う。


「しっかりしてくださいよ、隊長」


だからカノンは時々ハイネのことを隊長と呼ぶ。


「隊長って呼ぶなって!お前が言うと嫌味にしか聞こえねー」


もちろんハイネがそれを嫌うことは知っている。
自分たちの前だけであればいい。そうやって隊長が隊長らしくみえないのは。
しかしよそに行ってはそれが通じるはずはなく、どれだけ嫌だとしてもそれらしく振る舞う必要があるのだ。
だからそのことを忘れてしまわないように、カノンは時々ハイネと呼ばずに隊長とわざわざ形容する。
外に行って隊長がむげにされないように。それはこの隊の誰もが許すことのできない行為だ。
なぜなら自分たちの隊長はこのハイネ・ヴェステンフルスただ一人であるから。

他の誰にも務まらない。他の誰の下で働く気もない。
例えいくら隊長らしくない隊長であっても、彼以外がここに立つことは考えられない。ハイネであるから、自分たちはこの部隊に所属しているのだ。


「あ、ハイネ、これじゃないんですか?」
「それだっ!どこにあったんだカノンっ!?」
「使用済みファイルの中にはさまってました」
「あー、たぶん昨日片付けたときに紛れたんだな。助かった」


これでラルクに怒られずに済みそうだ、と書類を手に取るハイネはほんとうにどっちが隊長かわからなくなる。
ザフトには階級がない、ただ役職があるだけ。
彼はこれを誰よりも表しているように思う。
こんな人だからこそついて行こうと思うのだ。
ヴェステンフルス隊にはもう一つ独特の特徴がある。
それは―――


「お前らいなかったら俺、ホント隊長務まんねぇぜ」
「…ハイネだから、俺たちもするんですよ」


と、言うかしなきゃならなくなるんですけどね。

それは、ハイネ・ヴェステンフルスという人物に、魅力を感じて集まるのだ。
カノンもラルクも、スピア、フェイフォン、クリスだってそうだ。
皆、この場所を慕う。





アカデミーで買った切符で、乗った戦場という場所。
なにが役に立って、なにが無意味なことだったのか今だにそれはよくわからない。
けれど、乗り継ぐうちに出会ったこの場所。
いくら他と違おうと、アカデミーで習った士官の立場と違おうと、ここで立ち方を学ぼうと思う。
違うのならば、自分で見付けるまでだ。

ヴェステンフルス隊、MSパイロット―――カノン・キャメル。

このパスを手に入れるための学生時代だったのなら、今それは有意義だ。
ここでこれからも戦場の立ち方と、自らの在り方をこれからは学んでいこう。












という、ハイネ隊の小話。
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単純明快、基本プラス思考な人間。天然と言われるけど、実際不明。
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熱い系の音が基本好き。ロック好き。
あと、目立つのが好き。髪型変えるのが大好き。ミルクティ色の髪が大好き。派手髪にするの好き。
座右の銘は 成せば成る、成さねば成らぬ何事も で、とにかく初めてみることは大事だと思う。
とりあえずお酒が好きな、そんな感じの夢見人。

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